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「地蔵さまがわしに声を出して笑いかけはったんどす。そしてすっくと立ち上がり、どっかへ行ってしまわはりました」―由緒ある石仏が笑い立ち去っていくのが目撃された。続けて「地蔵を返してほしければ五十両の身代金を払え」という脅迫状が町年寄の元に届く。菊太郎は「誘拐犯」を取り押さえるべく金の受け渡し場所へ出向くことになったのだが…。笑う地蔵の正体は?下手人の目的は?京都東町奉行所同心組頭の長男として生まれながら、故あって「公事宿・鯉屋」に居候する田村菊太郎が、持ち込まれる奇怪な事件の数々を解決する人気時代シリーズ最新刊。 |
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大店の豆腐屋 美濃屋に不思議な客がやってきた。その男は焦げ茶色の宗匠頭巾をかぶり黒の同服を着て、太緒の雪駄をはき、飄々とすべるように歩いてくるのだ。そして、来るたびに油揚げを20枚注文すると、店先の床几に腰を下ろして全部、ぺろりと平らげてしまうのだった。
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同心組頭の兄・田村菊太郎は公事宿(訴訟人専用旅籠)の居候。人を殺めた疑いで捕らえられた吉松の無実を鯉屋に訴え出た恋人の八重。彼女の心にうたれた菊太郎は、事件を洗い直す。そして事件の裏に親が無宿者だった吉松に対する偏見があることを知る。怒る菊太郎がとった行動とは?「拷問蔵」ほか全六編収録の好評時代小説シリーズ第三作。 |
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