西大巓登山 (1990年10月)
年月日: 1990年10月?日
目的: 西大巓登山
出発点: デコ平林道から分岐する登山道途中(標高1,360m付近)
到達最高地点: 西大巓(標高1,981.0m)
到達最遠地点:  
天気: 晴れ
出発時刻:  
到着時刻:  
総所要時間:  
その他:  
最初に西大巓に登山したのは1987年頃であったと記憶している。当時、オフロードバイクを田舎の家に置いておき、帰省する度に林道を探して猪苗代や裏磐梯を走り回っていたものである。デコ平林道はその中でも最も長く標高の高い奥地まで伸びており、お気に入りの場所であった。デコ平から登山道らしきものが分岐していることは認識していたのだが、この日何故登ってみようという気になったのかは覚えていない。川桁の自宅から見える山だから興味があったのだろうか。予備知識も装備も計画も無く、山歩きの感覚で握り飯2つにジュース一本だけ持って、途切れそうな登山道を辿っていったら頂上に着いてしまったのであった。特に体を鍛えていたわけではなかったが、若いので体力があったのだろう。勢い余って西吾妻山の山頂まで行ってしまった。360°遮る物の無い西大巓の素晴らしさとは対照的に、西吾妻山の山頂は針葉樹に覆われていて眺望が無く、ひどく徒労感に襲われたのを覚えている。秋晴れの紅葉の美しい日で、出会った登山客はアベック1組のみ。静かだった昔の貴重な思い出である。

2度目の西大巓登山はその2年後。天気が悪いのが判っていて山登りしたのはこれが唯一の体験である。生きている感じのしない都会の生活から逃れてせっかく帰省したのだから天気なんてどうでも良い。とにかく自然と一体になりたかったのだ。親父の乗用車を借りていったのでデコ平林道には進入せず、林道の起点から延々と歩いて行った。距離も長いし標高差も1,100mあったのだが、バテることもなく短時間で往復してしまった。ガスがたちこめる不気味な登山道を辿り、ガスで何も見えず風が吹き付ける頂上に立った。帰りはしとしと雨が降っていたが、体が火照って上半身下着一枚で下った。20代の若さだからできたことである。濡れた紅葉がとても美しかったのを記憶している。この日、山中に入ったのは自分一人。今にして思えばかなり無謀だが、20代は怖いものなんて何もなかった。

3度目の西大巓登山が転職前の最後の山登りとなった。西大巓は人がいないのが魅力だったのだが、今では人気のコースである。スキー場の建設以降、この山には登っていない。

帰省先の猪苗代の自宅に置いていた愛車:カワサキKL250Rに跨り、一年振りに小野川湖奥のデコ平林道を走った。なんとデコ平のカラマツ林が伐採され、以前の細く抉れた登山道が重機によって拡幅されてしまっていた。車道は勾配が急になる自然林の手前までつけられていて、終点には乗用車も2台ほど停まっていた。この登山道は麓からのアプローチが長いが故に利用者がほとんど無く、過去2回の登山では人に遭ったことがなかったのだが、車が入れるようになったことでそのひっそりとした佇まいは失われてしまっていた。

カラマツの植林地であるデコ平を過ぎると勾配が急になり針葉樹と広葉樹の混生林の中を登っていくのだが、この自然林の一部もデコ平スキー場建設の調査のために伐採されていた。自分の憩いの場所がスキー場建設によって消滅するのは猪苗代リゾートスキー場、猫魔スキー場に次いで3つめということになり、さすがに憤りを通り越して、開発業者と認可した腐れ行政に激しい憎しみを感じた。

西大巓山頂に到るまでに確か2つほど小ピークがあったと記憶している。最初の前山とでも呼ぶべきピークを登りつめたとき、登山道の上でキノコを選り分けているオッサンがいた。「今日は!」と声をかけると「あーびっくりした。クマかと思った。」と言う。冗談ではなくて本当に驚いたらしい。この登山道で初めて遭った人間だからこちらも少々驚きである。この人は初めて来たようで、西大巓のことを知らなかった。被っていた帽子に二の女川漁協と書いてあったような気がするが、いったい何所のお人であったか。山頂まであと30分くらいだと言うと、「じゃ、俺も行ってみたい。」ということで山頂まで付いて来た。山頂には何人かの登山客がいた。既にこの頃から中高年の登山ブームが始まっていたのであろう。

3年前に西吾妻山に行った時、小屋周辺の高層湿原は踏み荒らされて到るところ土が剥き出しになっていた。西大巓から西吾妻山にいたる尾根上に手付かずの高層湿原が点在しているのが見える。西吾妻山に到る登山道は意図的に高層湿原を外れて尾根の南斜面につけられている。登山道から外れて低木の藪を漕ぎ高層湿原に行って見た。季節的に特に見るべき物はなかったが、手付かずの高層湿原が残されていることを確認して満足して帰りについた。

現在、デコ平には大規模な「東急急行電鉄 裏磐梯デコ平スキー場(通称:グランデコスキー場)」がある。あんな不便なところにいったい誰がスキーに行くのか?と思ったのだが、結構人気があるようだ。かつてデコ平林道を歩いて登ったところを、今ではホテルグランデコからパノラマゴンドラで山頂駅まで一気に登ることができる。自然開発はあまり好きではないが、確かにこのゴンドラは利用する価値がある。山頂駅からは自然散策路が整備されており、かつては地図上でしか確認できなかった百貫清水までお年寄りでも歩いていけるようになった。秋には特上の見事な紅葉を楽しむことができる。家族連れで楽しむには最高の場所である。

私がバイクを走らせたデコ平林道は、スキー場に到る区間は舗装車道建設によって一部が廃道となり、部分的に現在の舗装車道に形を変えた。スキー場からデコ平に到る区間は昔の道が大部分残されているようである。雪の降りしきる中、バイクで走った無人のデコ平が懐かしい。