西前高原山地の縦走その5(2007年3月)
年月日: 2007.03.04(日)
目的: 西前高原山地の縦走その5
出発地点: 西沢林道終点(標高約470m
到達最高地点: 903.6mピーク
到達最遠地点: 同上
天気: 晴れ(清澄度低い)
歩行開始時刻: 11:30
帰着時刻: 16:22
総所要時間: 4時間52分
遭遇した動物: 無し
行程: 西沢林道終点(11:30)〜833mピーク(12:17)〜840m級ピーク(13:00)〜700m級鞍部(13:21)〜903.6mピーク(13:59)〜林道・白沢線に降下(14:51)〜白石川・西荒川の峠(15:50)〜西沢林道に降下(16:10)〜車に帰着(16:22)  

記事: 高気圧圏下の最終日。降水確率04月並みの陽気に包まれるとの予報である。これだけ見るといかにも残雪歩きに良さそうに思えるのだが、土曜日に県北で見た大気の霞み具合から判断すると日曜日はさらに霞んで山並みは全く見えないであろうと思われる。景色が見えないなら残雪歩きの意味が無いので、近場で早春限定の山歩きをすることにした。今年も西前高原を歩いてみよう。

朝方は曇っていてでかける気力が湧かず、またしても当初の計画がボツ。
10時過ぎに春の陽光に誘われて塩谷町船生へ向かう。予想通り空気が汚くて平野部からは山々が全く見えない。今年は低気圧の移動する緯度が高いので例年よりも清澄度が落ちるのだが、今日は特に酷い。船生を通り抜ける際、女の子達が踊りを披露しているのが見えた。第一回船生コミュニティ祭りなるものが開かれていたようだ。

鬼怒川森林カントリークラブを抜け、林道・西前高原線から白石川沿いの西沢林道に入る。出発が遅いので西古屋湖から尾根伝いに歩く計画を短縮するためである。未舗装だが荒れた場所はなく、終点に車を置いた。白石川の源頭を経て鬼怒川左岸の尾根に上がり、尾根伝いに
903.6mピークに至り、南尾根を下って林道・白沢線に降下する予定である。ここまでは過去に反対方向に歩いたことがある。今回の山歩きの第一目的は西荒川・白石川の峠越えであり、尾根歩きはそのための長い序章である。

西沢林道終点からガレた沢を奥に向かう。今年は乾燥しているので水の流れは一切見えない。4年前に鞍部からこの沢に下ったとき、奇妙な植物の群落を見つけた。今年もたくさん芽を出している。スイセンではない。みかけはスノーフレークそっくりで、こんな植物の自生を他所では見たことがない。肉厚の葉の先をつまんでみると臭い。

白沢奥部のスノーフレーク似の植物群落  10:59

スノーフレークはヒガンバナの仲間だそうだから臭いのは当然。でもスノーフレークは地中海沿岸の原産で、昭和の初期に日本にもたらされた園芸種だそうである。人家の無い沢奥に広範囲に自生しているはずはないのだが...。帰宅後に自宅のスノーフレークを調べてみたが、外見も臭いも同一だった。花茎が出ていないので断定はできない。

沢は突き当たりで左右に分かれる。突き当たりの急斜面を一気に登れば尾根の鞍部に上がれる。今回は鞍部には上がらず、右側の谷をできるだけ詰めて右手の尾根に上がり833mピークを目指すことにする。なんでもない緩い勾配のガレ場でコケた。気が緩まないように一気に登ってしまおう。尾根に上がるとき、みかけはホクホクとした土壌であってもズルッと勢いよく滑る。この時期は内部が凍土になっているので日陰は要注意だ。こんな場所でも割れたガラス瓶があったので、昔から猟場になっているらしい。

833mピークで短い昼食休憩。日当たりが良く昼寝したくなる。833mピークから840m級ピーク手前の区間は、稜線部は障害物がなく歩き易い反面、痩せていて地形図でみるより急峻に感じられ端に寄ると滑落しそうで怖い。落ちたら命は無いだろう。断崖状の場所もあって眺めは悪くない。
840m級ピークは広葉樹林に覆われ、この尾根で個人的に最も気に入っている場所の一つだ。

840m級ピーク南斜面  12:47 840mピークの植生  13:00

840m級ピークから東北東の700m級鞍部へは古い山道を利用できる。一箇所だけスズタケの藪があり、マダニが一匹ズボンに付いた。だいぶ高原山に近づいたので鞍部からはなんとか高原山が拝める。この鞍部には明治八年に藤原村の星八百作なる人物が建立した祠がある。3年前に訪れたとき倒れていた祠を修復してあげた。でもよく考えてみると向きが反対だ。藤原方面を向けようとしても枯れた樹木の幹にぶつかるのである。建立後に礎石の横に生えた樹木が育って祠を倒したらしい。今はその樹木も枯れてしまっている。百数十年の時の流れを感じる。鞍部からの登りも古い山道を利用できる。この鞍部には古くから鈴倉沢を通って藤原村の住人が狩りや山仕事に訪れていたようである。

700m級鞍部から見る高原山  13:21 700m級鞍部の祠  13:22

ヒノキにモミが混じる林があるが、植林には見えない。903.6mピークの南側はミズナラの巨木が生える自然林。美しいオスのヤマドリが鳴き声を発しながら山をジグザグに登っていく。三等三角点には例によって三角点マニアのR.K.の板があった。3年前に縦走した時にはなかった。昨年810.2mピークを再訪したときにR.K.の板があったので、2004年3月から2006年3月までの間に設置したらしい。R.K.の山の呼称を調べて山名板を設置する行為にはいつも敬服している。しかし、標高を書いた板を設置することは無意味だ。何も無いのが魅力の山域に来る人は当然地形図を所持しているし、三角点があれば場所も標高も明白なのだから。

903.6mピークから長い南尾根を下る。結構なアップダウンがあって疲れる。30分程度で下れると思っていたのは甘かった。3年前に登ったときには2時間近くを要している。予定通りこしらさわ橋に降り立ち、林道白沢線を奥に向かう。眼下に見える白沢(西荒川の支流)は水量はしょぼいが幅広の美しい渓相だ。沢の合流点近くで林道と分かれて渡渉し、左股に入る。こちらも林道があって、沢に沿って数百m植林地が続く。林道は沢にぶつかって終点となり、そこからは沢歩きとなる。名前の通り沢底は白い岩盤で、礫石はなく岩盤が剥がれてガレになっているだけ。渓流釣り客が釣りしたついでに沢歩きしたらしく、足跡が残されていた。

途中からガレはなくなり、ひたすらナメが続く。勾配がほとんど無いので快適。川床の落ち葉の間に生命反応有り。落ち葉をめくってみるとカジカみたいな可愛いお魚さんがいた。魚が棲める環境とはとても思えない場所なので、下流から這い上がってきたのだろうか。

奥に進むにつれて支沢が何本か合流する。慎重に地形図を眺めて正しい谷を選択して進む。

白沢の川床  15:07 白沢奥部(最終二俣手前)  15:32

越えるべき尾根が間近に見えて慢心し、最後の最後で選択を誤った。日が傾く時間帯に沢底にいると気持ちに余裕が無くなる。右俣が正解なのに急峻な左俣に入ってしまった。やり直す気になれないのでそのまま四つん這いで詰める。尾根直下まで這い上がると少量の水が溜まるカール状の地形があり、そこからシカ道を辿って尾根に上がった。これで帰れる目処が立った。

那珂川水系と利根川水系を分ける尾根  15:48

西荒川流域の尾根はツガが多いのが特徴である。笹薮は全く無く、尾根幅が広い場所では写真のような雰囲気を持つ。

北西方向に少し移動して峠に至った。白沢側に下っていく薄いジグザグの踏み跡らしきものがあるが、さきほど詰めた源頭部同様、獣道なのかもしれない。少なくとも最終二俣まで沢底には道跡らしきものが一切無かったので下ってみる価値はなさそう。峠の反対側の白石川への下りは道が判然としない。すぐにスギの植林地となり、途中から林業関係者の踏み跡が出てくる。西沢林道に抜け、1km程度歩いて終点に帰着。

注意! 今回歩いた西前高原(鬼怒川左岸、鶏岳を含む船生奥部、西荒川源流域)は栃木県随一のヤマビル生息地であるので、落葉期を除き入らないほうが良い。