市沢峠(山ノ神峠)〜吾妻山修験の跡探訪その6〜(2006年11月)
年月日: 2006.11.19
目的: 市沢峠探訪
出発地点: 木地小屋側の旧道入り口(標高約690m
到達最高地点: 峠の尾根(標高約850m)
到達最遠地点: 同上
天気: 快晴
歩行開始時刻: 10:30
歩行終了時刻: 11:50
総所要時間: 1時間20分
遭遇した動物: カモシカ、ヤマドリ
行程: 木地小屋側の旧道入り口(10:30)〜旧道トンネル(10:40)〜市沢峠付近でウロウロ(10:49〜11:15)〜峠道を辿って車に帰着(11:50)  

午前中の会津地方は晴れ渡っていて、夕方から雨との予報が信じられん。せっかくの良い天気であるし、栃木に帰るまえに午前中ぶらっと市沢(現地の発音でイッツァワ)峠に行ってみることにした。市沢峠とは木地小屋集落からレークライン近くの市沢集落に抜ける峠のことで、昭和二十四年にトンネルが通るまで用いられていた。当然自分の世代はトンネルしか通ったことがなく、昔はどうやって山を越えていたのだろうかと思ったことはあっても、峠道があると想像したことはなかった。

今年出版された新版・会津の峠を読んで、ここがかつて吾妻山信仰が盛んなりし時代に多くの参拝客が行き交った歴史ある峠であることを知る。山岳信仰縁の地ということで、正式名称は「山ノ神峠」だそうである。今では地元の人でもその名を知る人はほとんどいないであろう。

木地小屋から舗装道路を谷奥に向かうと左に旧道入り口がある。平成十年に新しいトンネルが開通したため、現在は昭和二十四年に竣工した旧道の入り口は閉鎖されている。ここに車を置いて旧道を歩いてみる。かつて何度か車やバイクで行き来した道をこうして歩くことがあるとは思わなかった。特に荒れた箇所はなく今でも十分に走行可能な状態にある。旧道トンネルの入り口も閉鎖されているが、内部は崩れていない。このトンネルは車一台分の幅しかなく、交互に通ったものだ。確か信号があったように記憶している。

トンネルの周囲は勾配が急で昔の山道のようなものは見当たらない。東側のスギの植林地の中にある沢源頭部を登ってみることにした。こちらも道跡は無い。適当に登って峠のある尾根が間近に迫ったところできれいな幅広の道跡に出る。峠道は谷の右岸側から登ってきて旧道トンネルの上を通り、しばし峠尾根の南側(木地小屋側)斜面を横切って峠に至る。

旧道のトンネル   10:40 市沢峠   10:49

寛政八年の記録に拠るとここには神社があったという。何か痕跡でもあるのかと思って、峠西側に上がってみた。さらに古い時代の峠道の痕跡がある他には延々とカラマツ林とチシマザサ藪があるだけ。峠近くに戻って少し北側に下ってみると西吾妻〜中吾妻が良く見える。

市沢峠付近の尾根から吾妻山を遥拝  11:06

左が西大巓と西吾妻山、右が中吾妻山。

今度は反対側を探索してみようと東側のスギ林に上がってみた。尾根を辿ろうとしたら進行方向正面でこちらを見ている奴がいる。見事な毛並みの大きなカモシカである。こちらが写真を撮っている間、動じる様子はなかった。しばらくすると飽きてきたのか、後ろを向いて木に頭をこすりつけたりしている。余裕ですな。市沢峠の主に敬意を表してこちらが退散。

市沢峠の主   11:15

峠の東側(焼山側)のスギ林内で遭遇。

峠道からの南側(木地小屋側)の眺め   11:39

峠道の上側はスギ林、下側は伐採植林したばかりで眺めが良い。すぐ下に旧道舗装路、そのさらに下に新道が走る。

帰りは峠道を忠実に辿ってみる。旧道トンネルの上部でスギの植林が大規模に倒壊しており、通せんぼをくらって突破するのに四苦八苦。茨だらけの急斜面でバタバタと下方に向かって太いスギが倒れこんでおり、抱きつくようにして越える。この難所を抜けると伐採・植林したばかりの眺めの良い場所を通る。最後は小さな沢で折り返すようにして旧道に抜けた。全くの空身でたった1時間強の短い探訪であったが、十分に好奇心を満たしてくれた。