スッカン沢探訪その2・釈迦ヶ岳登山(2005年11月)
年月日: 2005.11.27
目的: スッカン沢探訪その2・スッカン沢周回
出発点: スッカン沢・雄飛橋(標高約880m)
到達最高地点: 釈迦ヶ岳(標高1,794.9m)
到達最遠地点: 同上
天気: 晴れ
出発時刻: 07:32
帰着時刻: 16:07
総所要時間: 8時間35分
遭遇した動物: シカ数頭
大堰堤から見下ろすスッカン沢   09:31

鹿股沢治山資材運搬路には幾つかの支線がある。大入道対面の標高約1,180mからスッカン沢の底に向かう支線は数箇所で崩落しており、ヒノキを植林した後は手入れされた様子が無い。

支線の終点近くに、建設年代の不明な落差の大きい古びた堰堤が一つある。強酸性の沢水によるためか傷みかたが激しい。砂防堰堤は無粋な物の代表格だが、こいつは風格があって滝を眺めているかの様。魚が棲まない沢だから許せる。

堰堤の下流部は写真のようなゴルジュで、沢水が酸性でさえなければ、沢登りや渓流釣りの名所であったろう。

鹿股沢治山資材運搬路から見る釈迦ヶ岳
10:24

1,627mピーク南東尾根の1,330m付近で分岐があり、地形図に記載されていない新しい支線が1,383mピーク方向に向かって下っていく。この支線は1,383mピーク北側の沢合流点で終点となる。

支線を下り始めてすぐの場所から見た光景。左側が釈迦ヶ岳、右奥に頭が覗いているのが鶏頂山である。

鹿股沢治山資材運搬路は日当たりの良い左岸斜面にあるため、所々で釈迦ヶ岳や1,627mピーク、1,700mピークの眺めの良い場所がある。釈迦ヶ岳は撮影場所より南側に位置するためチンダル現象ですっきりと見えないことが多い。

釈迦ヶ岳山頂にて   13:02

釈迦ヶ岳の北側登山道は積雪しており、多くの登山者によって踏まれて圧雪状態で少々危険。登山ブームで多くの登山者に踏まれて、山頂の禿げは年々急拡大している。

この時期としては遅い時刻の登頂なので、久し振りの山頂独り占め。ご覧の通り南西側(中岳、西平岳)の清澄度はいま一つだが、晴れて穏やかな山頂の雰囲気を満喫。

 

スッカン沢右岸尾根の下降点  15:41

釈迦ヶ岳から下塩原矢板線までスッカン沢右岸尾根を一気に豪快に下る。

剣ヶ峰から大入道まではダケカンバ樹林が美しい。大入道から下塩原矢板線までの道無き緩やかな尾根にはミズナラの大木が多く、膝から腰程度のミヤコザサの林床で、雰囲気の良さは高原山随一。

関連記録
  前黒山〜明神岳〜鶏頂山縦走 (2003年12月)
  小間々台〜大入道〜剣が峰周回(2004年10月)
  スッカン沢源流探訪 ‐ 高原山の胎内へ(2004年11月)

土曜日は良い天気なのに仕事。出勤日なのに管理職が何人も率先して休みやがって。うちの事業部の将来は暗いな。

日曜しか休めないとなると、遠出する気にはなれん。栃木に未訪の場所は多々在れども、食わず嫌いにつき興味が湧かない。三依方面にでも行ってみようかと思い調べては見たものの、食指が動かない。この地域は何度眺めても荒海山以外は我が目を惹かないのだ。史跡があるわけでもない。広くて起伏が少なく藪もなく且つ眺めが良い尾根を地図なんかに頼らずに自由奔放に豪快に歩きたいというのが自分本来の山歩きの嗜好だ。

栃木県でこの条件に合致する代表的な地域は足尾だが、近場で似たような場所がないかと探していて思い当たったのが高原山・スッカン沢右岸尾根である。ここならばシカ狩りも入っていないであろう。スッカン橋を出発点とし、下塩原矢板線の最高点から左岸尾根を辿り鹿股沢治山資材運搬路に抜け、スッカン沢を探訪した後、鹿股沢治山資材運搬路終点からスッカン沢最奥部尾根を登って登山道に抜け、無人の釈迦ヶ岳を踏んで、一気にスッカン沢右岸尾根を下る。いつもの如く綿密な計算はしない。コースをじっくり眺めて、体験するであろう地形と疲労を予想し、幾つかの目標時刻を設定。日が短いので時間的余裕を確保するために釈迦ヶ岳到着は13:00までが望ましい。万が一を考えて重い荷物を担いでも、今の脚力ならばこの魅力的なコースを一日で周回可能と思われた。

07時32分 雄飛橋駐車場から歩行開始(標高約880m)。   下塩原矢板線を歩いてスッカン沢左岸尾根上に向かう。MTBを押して登った前回よりは楽だ。アニメ「イニシャルD」のレース場として有名なためだろうか、カーブにはドリフト痕やタイヤ糟が目立ち、ゴム臭い。夜になると暴走する連中が現れるのだろう。夜間はこの道は通らないほうが無難だ。下塩原矢板線の最高点にはオフロード車が一台停まっていた。ハンターかもしれないが、中に人がいるのでまだ安全だろう。

07時56分 下塩原矢板線の最高点からスッカン沢左岸尾根に入る(標高1,006m)。   落葉樹林の中を腿程度の丈のミヤコザサを分けてズンズン進んでいく。道は無い。一箇所尾根を横切る道跡のようなものがある他は、稜線上にかすかなシカ道が続くのみ。登るにつれてミヤコザサの丈や密度が徐々に高くなる。どう見てもクマイザサではなくミヤコザサが巨大化したものだ。

08時35分 1,227mピーク到着。   一年振り。気持ちの良い場所だ。ミズナラ樹林を通して男鹿山地も見える。ここからは笹の丈も低くなる。鞍部に下って登り返すと野地湯沢のカーブから上がってくる林道に出る。

08時58分 鹿股沢治山資材運搬路へ抜ける(標高約1,220m)。   大型オフロード車の真新しいタイヤ痕有り。昨年も遭った(財)林業土木コンサルタンツのランクルなんだろうか。相変わらず仕事以外の目的で入り込んでいるようだ。

09時10分 分岐点到着(標高約1,180m)。   谷の対面に大入道が聳える。沢底に下る支線はおそらく堰堤建設のために設けられたものだろう。空身で堰堤見物に下る。周囲にはヒノキが植林されており、植林年代はまちまち。下り始めてしばらくは荒れが少ないが、途中からはほとんど消えてしまっている。シカの通り道があるにすぎない。

09時26分 スッカン沢の底に下る(標高約1,090m)。   沢底は意外に広く平坦。石積みの場所があった。炭焼き窯ではないので、昔の飯場跡なのだろうか。ワイヤーや空き瓶なども散見される。堰堤は下降点のすぐ近くにある。予想以上に古い堰堤で、酸性水でコンクリートが劣化するためか痛みが激しい。落差のある古びた堰堤はまるで瀑布の様。沢水を口に含んでみたが、この地点ではだいぶ薄められているようで、違和感はない。堰堤上流は土砂堆積でゴーロと化しているが、下流部はスッカン沢本来の渓流の姿が残されている。しばし流れを見つめてから谷底脱出。

09時48分 分岐点復帰(標高約1,180m)。   順調に林道を進んで最奥部の分岐手前に達したとき、重低音のエンジン音が響いてきたがすぐに静かになった。分岐から新しい支線を下っていくと斜面上方で男性の大きな声が響いた。いったい何やってんだ?日曜日にランクル一台で入り込んで工事しているはずがない。植林も無い。上方の旧道は廃道で車は通れないはずだ。無理に進入してはまったのか?

10時35分 鹿股沢治山資材運搬路終点到着(標高約1,280m)。   ここで初めて地図を見る。終点下を流れる沢(右俣)は強酸性だが、1,383mピークの南側を流れる沢(左俣)は未調査。よって、道路終点から強酸性の右俣を下り、合流点から左俣を遡行して、次の二俣から尾根に取り付き1,421mポイント経由で1,566mポイントで登山道に抜ける計画だ。しかし、地図を見て、1,383mピーク西の鞍部を越えるコースに変更。

沢を渡渉する際、強酸性の水を口に含んでみた。昨年の自分の感覚に間違いはなかった。鉄分を含んでいるらしく、口いっぱいに血の味が広がる。1,383mピーク北側の急斜面はクマイザサに覆われており、なんとか登っていける。登る途中で昔の鋸跡を見つけて驚く。支線が建設されていなかったころ、どうやってここから樹木を搬出したのか?

鞍部には明瞭な獣道有り。あまり広い尾根ではないし、遠回りになるので使う予定はなかったのだが、時間に余裕があるし獣道があるので安全であろう。急に南の沢に下るのがもったいなくなって、またまた予定変更。獣道を辿ってそのまま尾根を登っていくことにする。標高1,450m付近で「写るんですNight and Day」の中紙が落ちていた。ゴミなので拾う。さらに登っていくと、2人ぶんのゴミが散乱していた。ミルクティーの空き缶が2個、2005年10月9日賞味期限のサンドウィッチ?の包装、そして「写るんですNight and Day」の包装。ゴミを平気で捨てられる神経の持ち主で且つ使い捨てカメラを使用していることから、登山者であるとは思えない。(財)林業土木コンサルタンツがキノコ採りにでも来たのか?腹が立ったので全て回収。

尾根が広がると深いミヤコザサに覆われており獣道は消える。笹薮の深い区間は長続きせず、笹が刈られた登山道に飛び出る。

11時35分 登山道に抜ける(標高約1,570m)。   所持していた地形図は『高原山』のみ。明神岳西峰はエリア外だが、たぶんすぐ近くのはず。目標時刻12:00に対して余裕があるので、空身で西峰まで往復する。

11時43分 明神岳西峰到着(標高1,624m)。   山頂の薄く積もった雪上に足跡無し。営業中のハンターマウンテンスキー場から遠く人の声が響いてくるが、誰も訪れないらしい。西峰の展望台で眺めを堪能してから釈迦ヶ岳を目指す。スッカン沢最奥部縁の登山道は笹刈りされており、辿る人は少なくフカフカした土壌が維持されているので歩きやすい。うっすらと積もった雪上には前日のものと思われる足跡が一人ぶんあるのみ。

爆裂火口壁の約1,700mのピークから眺める釈迦ヶ岳は丸くモッコリした印象。登山道があると思われる北側斜面は急勾配で、積雪して白い。この日も早朝から多くの登山者がメイプルヒルリゾートスキー場跡から釈迦ヶ岳に登ったらしく、雪が踏み固められられている。このルートで釈迦ヶ岳に登った事がないし、軽アイゼンを準備してこなかったのでちょっと不安が過ぎる。登りはまだしも下りが問題だな。でも、普通の登山靴の跡しか残っていないので、なんとかなるだろう。

大間々方面への分岐は急なゴツゴツした区間を登りきった場所にある。分岐点から釈迦ヶ岳山頂は目と鼻の先。山頂には人の姿が見えない。釈迦ヶ岳は人気があり、山頂で人に遭わないのは初登頂以来のことだ。

12時55分 釈迦ヶ岳到着(標高1,794.9m)。   13:00までに到着するという目標をクリアー。周囲は登山者に踏まれて禿げてぬかるんでいる。これだけ人気の山になったのだから山頂の禿げにチップを敷くくらいのことはしても良かろうに。

高原山の周辺だけきれいな青空が広がり、風も弱い。時間に余裕ができたので、穏やかな雰囲気を満喫しながら三角点に腰掛けて遅い昼食とする。中岳方面から男性の大きな話し声が響いてきた。西平岳まで往復してきたのかもしれない。静かな雰囲気を大事にしたかったので13:15にそそくさと退散。ところが北側に下る途中で登ってきた年配の男性登山客と出遭った。結構遅い時間に登ってくる人がいるものだ。

圧雪状態の急斜面を下り終えて快調に飛ばす。ゆっくりとスッカン沢と権現沢の眺めを堪能したいところだが、できるだけ時間の余裕を作りたいので無休憩で歩く。剣ヶ峰までの区間は歩きやすいがためにスピードが上がるので、細かいアップダウンで脚に疲労が溜まりやすい。

13時57分 剣ヶ峰到着(標高1,540m)。   大入道に向けて下る登山道は矢板岳友会の皆さんによってきれいに笹刈りされていた。剣ヶ峰から下るときに見えるスッカン沢右岸尾根のダケカンバ林は足尾に優る美しさだ。北風が吹き付ける場所なので稜線の右と左で見事に植生が分かれる。この点も小法師尾根に相通じるものがある。午後になって稜線を北風が吹き抜けるようになってきた。エロ岩にご挨拶して先を急ぐ。

14時36分 大入道到着(標高1,402.4m)。   安全に林間を歩ける時限の4時まで一時間以上確保した。第一目標であるミズナラの大木の尾根をゆっくりと下れそうだ。大入道からの下りは勾配がきつく、若干ではあるがアズマシャクナゲも見られる。下る方向を見定めにくいので、この日、2度目の地形図確認。急勾配の区間を下り終えると、快適な尾根歩きが待っている。点々と在る白いビニール紐の目印がボロボロになってゴミと化しているので、幾つか回収。

15時08分 スッカン沢右岸尾根・方向転換点到着(標高約1,135m)。   尾根を直進すると崖に出てしまうので、スッカン沢対面の1,227mピークがちょうど北西の方角に見える場所で方向転換が必要だ。赤ペンキの矢印もある。地形図で方向転換する場所であることを確信したので油断してしまった。地形図をチラッと見るだけですぐしまってしまい、頭の中のおぼろげな地形図頼りで歩くため、一つ隣の尾根を下りかけて間違いに気づくことが多い。今回も逃げていくシカの群れに気をとられて、間違いに気づくまで50m程度急な尾根を下ってしまった。実はそのまま下ることも可能で、雄飛橋への最短ルートとなる。しかし、今回は尾根を末端まで歩くことにこだわり、登り直して目的の尾根に入る。

ミズナラの大木と膝下のミヤコザサの組み合わせが美しい、起伏の緩やかな長い尾根である。この尾根の雰囲気は高原山で最高に位置づけられるであろう。標高1,000m付近で2人の年配の男性に出遭った。登山者の格好でも山仕事の格好でもなく空身の普段着である。キノコ採りの季節はとうに過ぎているし、写真撮影が目的でもない。ならば日が傾いて暗くなりかけた道の無い尾根上に何をしに上がってきたのだろうか。向こうも好奇の目でこちらを見ている。挨拶をしたのだが、返事はなかった。一箇所スズタケの藪があるが、再びミヤコザサとなり、気持ちの良い尾根歩きの締めくくり。

15時41分 下塩原矢板線に降下(標高約960m)。   もう帰り着いたも同然。さきほどの男性2名はてっきり尾根末端から登ってきたと思っていたのだが、車はなかった。その後、雄飛橋に戻るまでの区間にも車はなかった。雄飛橋手前の崖から豊富な湧き水が流れ落ちており、水を汲めるようになっている。顔を洗ってリフレッシュ。

16時07分 車に帰着。   

秋に天候に恵まれなかった分、山ノ神が恵んでくれたのだろうか。今年度最高の自分本来の爽快な山歩きだった。

帰りは下塩原矢板線を矢板方面に抜けたのだが、尾根の周囲のどこにも車は停まっていなかった。道路に下りてから40分程度経過していたので、尾根上で出遭った2名の男性は既に帰ったのだと思いたい。まさか亡霊ではあるまいな?

 

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