| 前日(土曜日)はヘボながらアユ釣りで燃焼。しかし、相変わらずまとまった降雨が無く、減水して細った那珂川で他の釣り客との位置取りを気にしなければならないので爽快感がない。日曜日はさらに天気が良くなる見込み。どうせ日曜日は釣り荒れで釣果が落ちる。夏山登山に備えて脚力維持のためにハイキングに行こうと考えた。 土曜日は湿度が低く、友釣りで下半身を水に浸けていたため、気温30℃を超える暑さでもほとんど発汗せずに済んだ。30℃を超える気温の中、山歩きをしたらどうなるか。汗かきなので滝のように汗が滴り、全身ずぶ濡れ状態になるのは確実。水分を補給してもダメージが大きい。短時間歩行で済み藪が無くて興味のある未訪の場所はどこか?塩原から鹿股川沿いの八方ヶ原ハイキングコースを辿り、滝を見物しながら学校平に行くことにした。同じ道を下るのはつらいので、下塩原矢板線をMTBで下る。スッカン沢の雄飛橋から長い登りがあるのが難点だが、その後の下りは十分に魅力的。
土曜夜は今年一番の寝苦しさ。気温が低い早朝に行動開始したかったのだが、寝不足もあって起きられなかった。ようやく目が覚めた時には7時半。厳しい時間帯の行動となった。矢板市経由で下塩原矢板線を登り、MTBを学校平に置いて塩原に下る。
09時35分 塩原温泉ビジターセンターから歩行開始(標高約545m)。 八方ヶ原ハイキングコースの正式名称は「前山八方ヶ原線歩道」という。実はビジターセンターの駐車場が起点なのであるが、これを知らずに下塩原矢板線を歩いて塩の湯温泉へ向かった。塩の湯温泉へ向かう分岐の手前で八方ヶ原ハイキングコースが合流する。
塩の湯入り口で車でやってきた老夫婦に元湯への道を聞かれた。地図を見せながら説明し、解りにくいので途中でまた道を尋ねるようにアドバイス。塩の湯は幾つか旅館がある。昔、会社が今のようにぎすぎすしていなかった頃、忘年会で明賀屋に泊まったことがあった。長い木の階段を下り、雪の舞う鹿股川の渓谷美を眺めながら狭い岩風呂に入ったことを思い出す。バブルがはじけてから経営的に厳しいのだろうか、温泉の建物はいずれも老朽化が進んでいるように見える。
塩の湯温泉を通り過ぎる頃、既に発汗してぐしょ濡れ状態。気温も高いが、湿度が非常に高くて無風状態。これでは先が思いやられる。飲料水を1リットルしか用意してこなかったのは失敗だった。このペースで行くと2リットルは必要だろう。途中の湧水やきれいな沢水が頼りだ。
塩の湯から林道をしばらく進むと公衆トイレがある。ここまでは車で様子を見に来たことがある。このトイレの小便器の水は循環式で、汚く臭い水が流れるので閉口した記憶がある。仕切りのないところに並んで壁に向かって放尿する昔の駅のトイレの方が自然だ。さらに進むと林道の路肩が崩落しているため車止めされており、一台の車が停まっていた。この時期はハイカーが少ないらしい。沢に遊歩道が下りて行くので、これに従う。一旦沢底へ下り、野地湯沢の流れを渡ってスズタケの生える斜面の道を登ると、再び林道へ抜ける。
10時15分 林道終点到着(標高約650m)。 塩の湯温泉から1.4km地点が林道終点である。遊歩道をしばらく谷沿いに進んで振り返ると、谷下後方に鮮やかなコバルトブルーの堰堤プールが見えた。温泉成分のイオンが溶け込み裏磐梯の五色沼のような色をしている。近くで見たかったが、戻るのが嫌でそのまま進行。遊歩道は以前は急な斜面に沿っていたらしいが、一部崩落したために現在は進入禁止になっている。危険な場所を高巻くために新しく道が設けられている。高巻きにしてはだいぶ登らされる。ここでしこたま汗をかかされた。
谷ははるか下方にあり、本当に滝巡りコースなのかと思いながらアップダウンの少ない区間を谷奥へ向かう。笹の種類についての説明板があるが、遊歩道沿いにはスズタケしか生えていない。何度か折れ曲がりながら谷底へ下っていく。せっかく登ったのにもったいないという気がしたが、すがすがしい渓谷の雰囲気に包まれてそんなことどうでも良くなった。降り立った場所は桜沢とスッカン沢の合流点近くで、ほんの少し歩けばスッカン沢に架かる咆哮霹靂ノ吊橋に至り、橋向こうに桜沢の咆哮霹靂の滝が見えてくる。橋の袂にスッカン沢に魚が棲めない訳の説明がある。
10時52分 桜沢・咆哮霹靂(ほうこうへきれき)の滝(標高約700m)到着。 空梅雨で水量が少なく見ごたえが無いのではないかと危惧していたが、桜沢には結構な量の水が流れていた。しばらくスッカン沢左岸沿いに進むと、雄飛滝へ向かう遊歩道が分岐する。当初は行く予定がなかったものの、雄飛滝まで0.6kmの標示を見て気が変わった。
遊歩道は最初は普通の山道だが、急な斜面に設けられた木製階段を下ってスッカン橋を渡るまでの区間は、柱状節理の壁が迫り、幾つもの水流が滴り落ちる。たった2時間歩いただけで体から水分が抜けてしまい、血の巡りが悪くなったことを感じたので、ここできれいな水をたらふく飲む。スッカン橋の傍にあるカツラの巨木が圧巻である。単なる一本の巨木ではなく、周囲にひこ生えが二重、三重に取り巻いている。谷底の湿潤な環境だからこそ長寿命が可能であるようだ。カツラの木を見せたいがためであろう、スッカン橋を渡る前にわざわざカツラの木を一周するように木製の回廊が設けられているのだが、これは少々頂けない。
スッカン橋を渡った先の左岸は急峻ではなく、下塩原矢板線から下ってくるスギの植林地帯があり、ごく普通の沢沿いの歩道の印象。前方の遊歩道を少し下った場所にある木製の展望台に数名の中高年の姿を発見。皆同じ様なこぎれいな格好をして三脚を担いでいる。ハイキング目的ではなく滝の写真撮影を目的とした人達である。スッカン沢の滝は瀑布写真愛好家に人気があり、下塩原矢板線の雄飛橋駐車場から下ってくる人が多いのである。
11時20分 スッカン沢・雄飛の滝(標高約715m)到着。 下を覗きこんでいるので、雄飛滝は歩道から見えない場所にあるらしい。汗ぐっしょりのハイキング客は自分独りで、写真撮影中の人達に割り込んで滝を見る気になれなかった。ほんの少し進むと仁三郎の滝(舞姫滝)があり、こちらを眺めて満足して引き返す。もっと先に行けば「素簾ノ滝」なるものも見物できたらしいが、予備知識がなかったのでここで引き返す。残りは後日の楽しみとする。
11時43分 分岐点に復帰。 しばらく登って桜沢左岸斜面に出ると、初めてそよ風を感じた。標高が高くなるにつれて湿度も幾分下がってきたようである。雷霆ノ吊橋を渡って右岸移った後は、遊歩道はずっと右岸側にある。小間々から大入道に向かう時に横切る桜沢は枯れ沢であるが、その北側の支流等から流れ込む水を合わせて、中流部ではそこそこ水が流れている。咆哮霹靂ノ吊橋の案内板には桜沢に魚が棲むと書かれていたが、本当だろうか?落差の大きな咆哮霹靂の滝以遠に魚がどうやって棲みついたのであろうか?登っていく間、ずっとこのことが気にかかっていた。
12時02分 桜沢・雷霆(らいてい)の滝到着。 ナメ滝で流程が長い。何名かのグループが滝を眺めながら昼食中だった。午後から降雨する可能性があったため、ゆっくりせずに先を急ぐ。滝より上流にも小規模なナメ滝が幾つもある。透き通ったプールを眺めていて、水面で魚が翻ったように感じた。凝視することしばし。30cmくらいのイワナを発見。太古から代々生命を繋いできたイワナなのか、それとも職猟師が移植放流したイワナの子孫なのかは判らない。
桜沢から離れて緩斜面を登るようになると、周囲の林床は若葉が美しいミヤコザサとなる。遊歩道を辿り始めてからずっと山中に漂う芳香が気になっていた。ところどころエゴノキに似た白い花が散乱しているのだが、高木なのでその正体をなかなか突き止めることができない。ようやく特定した樹木は、丸い葉と花房が特徴である。帰宅してから調べて、エゴノキの親戚のハクウンボクであることを知る。一帯はエゾハルゼミの大合唱がこだましていた。セミの種類と発生時期についての説明板があったが、自分が経験上知っている発生時期とはだいぶ差があるように思う。地域や標高によって差があるということであろう。
学校平まであと1kmの地点に明治45年2月建立の山ノ神がある。裏に大勢の氏名が彫り込まれていたが、どういった生業の人達が祀ったものかは不明。周囲は放棄されて雑木林然としたカラマツの植林地帯だが、樹齢が若いので昭和時代の植林地帯である。植林以前の様子は不明であるが、元々は明治時代に炭焼きで伐採された地域なのであろう。山ノ神が建てられた明治45年といえば八方ヶ原一帯で大規模に炭焼き事業を営んでいた矢板薪炭合資会社が倒産した年である。
13時06分 学校平(標高約1,050m)到着。 学校平への出口は、山の駅の対面の公衆トイレ横である。八方ヶ原ハイキングコースの案内板があるので判りやすい。学校平付近は長いこと行われてきた整備事業が完了し、放牧場が部分的に開放され、散策路が設けられている。せっかく来たので、強い陽射しの下、学校平の三角点を探してウロウロ。レンゲツツジの花期はとうに過ぎていたものの、草原に咲く白いノコギリソウがきれいだった。
14時05分 学校平出発。 スッカン沢までMTBで快調に下る。雄飛橋手前で崖から迸る湧水で喉を潤し、この日最後の登りに備える。雄飛橋から最高点まで約140mもMTBを押して登らなければならない。長い登りの後に待つのは爽快な下り。車より速い。スピードが出すぎることはなく、路面状況も良好である。沿道にはコアジサイの薄紫色の花が満開だった。
15時08分 車に帰着。 単に滝や渓谷の景勝を楽しむことを目的とするのではなく、自然探求路として整備されている。県民の森〜ミツモチ〜大間々〜学校平の自然探求路と並び、お薦めのハイキングコースである。
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