スッカン沢源流探訪 ‐ 高原山の胎内へ(2004年11月)
年月日: 2004.11.21
目的: スッカン沢の酸性水源の確認
出発点: 鹿股川治山資材運搬路入り口(標高約920m)
到達最高地点: 鹿股川治山資材運搬路旧道終点(標高1,340m)
到達最遠地点: 同上
天気: 晴れ後曇り
出発時刻: 08:12
到着時刻: 13:38
総所要時間: 5時間26分
遭遇した動物: シカ3頭、ヤマドリ一羽
鹿股川治山資材運搬路最奥の分岐 10:04

左が新道、右が旧道。いずれもここから1kmも進まないうちに終点となる。左奥に見えるのは釈迦ヶ岳。

左の新道は徐々に沢に下り、1,383mピーク北側、標高約1,280m付近の酸性の水が流れる沢手前で終点となる。

スッカン沢源流の鉄鉱水 10:16

1,383mピーク北側の沢の左俣を流れる。比較的水量が多い。沢の底は鉄酸化物の沈着で赤く変色している。猪苗代湖に流れ込む長瀬川の様。1,383mピークの南側の沢にも酸性水の源泉があるのかどうか確認していない。

水は無色透明。水温は低く温泉ではない。口に含んでしばらくするとジワッと酸味がひろがり、後味は血を舐めたときのよう。酸性が強いため、底石に藻類の付着はなく、ヌルヌルとしていない。

御岳山から野沢の斜面を下ったところに鉄鉱水なる呼び名の湧水があるという。末期癌に効くとかで人気があり、立ち入り禁止となる前は滑落事故で死者まで出したことがあったとか。スッカン沢の源泉も同じような効能があるのかもしれない。

旧道終点 10:39

旧道は1,383mピーク北側の沢の右俣で終点となる。砂防堰堤建設後に廃道となり、路上には法面崩壊による落石がごろごろ。

終点から先は急峻でガレた沢となり進むのは危険。

1,227mピーク  12:20

背景は前黒山東南東の1,700mピーク。

スッカン沢北尾根の1,227mピークは、南尾根に突き出たおできのような大入道と対峙する。南側はスッカン沢にスパッと切れ落ち、ゴヨウツツジをはじめとしてツツジ類が多い。鹿股川治山資材運搬路の峠から10分程度でいける。藪は全く無い。

スッカン沢の左右両岸の尾根稜線はミズナラとダケカンバの巨木に覆われている。北尾根は残念ながら標高1,400m付近までヒノキの植林地となってしまっているが、稜線部は原生林が残されていて、太古の雰囲気を味わえる。

クサギ

冬枯れて彩りは少なく、何箇所かでマユミやムラサキシキブなどの実を見かけた程度。

もっとも可愛らしかったのが写真の実。赤い鞘が5裂して星型に広がり、中央の青みがかった黒い果実の光沢が美しい。

20日は前日の酒の飲みすぎで出かける元気なし。21日は午前中は晴れるが午後から雨との予報。藪歩きせずに短時間で出かけられる対象として浮かんだのが高原山のスッカン沢である。スッカン沢の水は強酸性であるため魚が棲めないという。酸性水が流れているということはスッカン沢のどこかに温泉が湧き出ているということか?火山で周囲に温泉が多いのだから考えられなくはない。しかし、周囲の温泉は、硫黄泉である新湯温泉を除いてほとんどが地熱で地下水が温められたナトリウム泉で、強酸性であるという話は聞いたことがない。どんな泉質なのか興味が湧く。

出身地の猪苗代町を流れる長瀬川は強い酸性であるため川原の石に酸化鉄が沈着して異様に赤い。この強酸性をもたらしているのは安達太良山の沼尻鉱山跡から流れ出る硫黄泉である。一方、スッカン沢を支流に持つ箒川の川原の石には酸化物の沈着は見られない。この違いは何なのか?同じ酸性でも泉質が違うのか?酸化されるべき鉄分の含有量が少ないのか?湧出量が乏しく箒川で薄められてしまうのか?素人ながらにあれこれ考えると楽しい。

酸性水が湧出する場所を知らない。どこかの沢の水源となっているかもしれないし、スッカン沢の途中で噴き出ているかもしれない。危険を冒してスッカン沢を遡行する気にはなれないので、スッカン沢の奥で意味の無い治山工事をする目的で建設された鹿股川治山資材運搬路を歩いて、高原山の胎内へ潜ってみることにした。

08時12分 歩行開始(標高約605m)。 ゲートが閉じられているので下塩原矢板線の野地湯沢カーブに車を置いて歩く。ここを歩くのは2003年春に訪れて以来である。前回はまだ雪が残っていて道が荒れていたが、今回は全く荒れていない。しばらく歩いたところに間伐材で化粧した最近はやりのデザインの堰堤が2つ建設されていた。間伐材の有効利用であるなどと喧伝しているが、腐って長持ちしないような堰堤を作るのは無駄なのでやめたほうが良い。

野地湯沢を跨ぎ右岸の尾根に向けて上がっていく途中で、下手から車の音が聞えてきた。日曜でも工事車両が入ってくるのだろうか。それともハンターが塩那森林管理署に通行許可をもらって入ってきたのであろうか。顔を合わすと面倒なことになるので隠れてやり過ごした。

野地湯沢の右岸尾根からは男鹿山地が良く見える。快晴の下、気難しい男鹿山地に雲がかかっておらず、午後から雷雨も予想されているのが信じられない。野地湯沢の右岸にあたる尾根の両側の斜面は植林地になっており、稜線部のみ天然林が残されている。稜線に沿ってヤドリギを幾つも抱えたミズナラの大木が聳える様は栗山村ですらお目にかかれない光景で、何度見ても飽きることがない。南側に1,227mピークを見ながらヒノキの植林地帯を何度か折れ曲がって高度を稼ぎ、峠に至る。

09時07分 野地湯沢‐スッカン沢峠到着(標高約820m)。 初めて釈迦ヶ岳に登った時から興味があった峠。南側の視界が一気に開けて明るい。ここからはしばし下り坂になる。シカが多く生息している峠近くに車が無いところをみると、先ほど追い抜いていった車の持ち主はハンターではないらしい。峠から1km弱で最初の分岐に至る。スッカン沢の底に向かって下降する左側の道は堰堤建設以降は放棄されている。分岐から500mほど進んでから大きく折れ曲がって高度を稼ぐと、1,700m峰から南に伸びる尾根を回りこむ。ここからはスッカン沢最奥部の1.627mピークの赤い崩落斜面が目立つ。

1,700m峰南に切れ込む沢は水量すくなく、水は無味無臭。次に跨ぐ沢の水も同様。

10時04分 鹿股川治山資材運搬路の旧道・新道分岐到着(標高約860m)。 1,627mピーク南東に伸びる尾根上で地図に表されない分岐がある。地図に載っているのが旧道で、新道はスッカン沢に向けて下っていく。分岐には何故か鹿股川治山資材運搬路起点と標示されている。

10時14分 新道終点到着(標高1,276.4m)。 新道は分岐から1kmも進まないうちに終点となる。今朝追い抜いていった車(ランドクルーザー)が止まっていた。車は自家用車ではなく、(財)林業土木コンサルタンツ・前橋支所の所有する車であった。運転者は不在。なにかの調査目的で訪れたらしい。(財)林業土木コンサルタンツのHPに拠ると、森林土木技術の向上と、森林土木事業の振興発展を目指し昭和38年に設立。林業事業と治山事業を主とし、調査・計画から測量・設計、施工管理の各段階において、各種調査や測量結果などの情報収集とその分析、立案、設計、許認可申請手続きに至るまで行う。森林の文字を冠してはいるが、要するに土木会社であり、理事のほとんどを農林水産省の天下りが占めている。

終点先の沢の水が酸性であることが確かめられたので満足。本当は1,383mピーク南側の沢も確認したかったが、徐々に上空に雲が増えてきたので戻ることにした。

10時35分 旧道終点到着(標高約1,160m)。 分岐までは戻らずに途中で斜面を登って旧道に出て、旧道終点に向かった。法面の崩壊で石がゴロゴロしている。終点の先にある急峻な谷の奥を覗こうとしてガレた急斜面を少し進んで見た。眼下の林を動物が動く音がする。良く見ると人間が独り山を下ってくるではないか。軽装だが登山者らしい格好をしている。下る方向は新道終点であるので、(財)林業土木コンサルタンツの人であるらしい。独りで調査に来ることは有り得ない。登山して戻ってきたにしては早すぎる。いったい何をしていたのだろうか。会社の車でキノコ採りにでも来たか?鹿股川治山資材運搬路を峠まで戻る間に追い抜かれることはなかった。

峠からはスッカン沢を右に見下ろしながらミヤコザサの尾根伝いに気持ちよく楽に1,227mピークに行ける。

12時17分 1,227mピーク到達。 塩原火山の馬蹄形爆裂火口壁(スッカン沢)を形成するピークの一つとして「小入道」なる名称を目にすることがある。しかし、地図上には「小入道」なる山名はない。1,227mピークは南尾根の大入道と対峙する存在なので、個人的には「小入道」と呼びたいところだ。しかし実際の「小入道」とは大入道の近くにある何の特徴もない小ピークの呼称であったようである。

あいにく空がどんよりと曇ってしまい、最高の条件とは言い難かったが、長年興味を懐いてきた場所を訪れることができて満足。期待以上の自分好みの場所で、季節を変えて再び訪れてみたい。

12時49分 野地湯沢‐スッカン沢峠復帰。 

13時38分 車に帰着。