那須連峰巡りその1 (2003年10月)
年月日: 2003.10.19
目的: 深山ダム分岐、沼原、日の出平、熊見曽根、三斗小屋温泉周回
出発点: 三斗小屋温泉に到る林道の車止め(標高約860m)
到達最高地点: 熊見曽根北端のピーク(標高1,900m)
到達最遠地点:
天気: 快晴
出発時刻: 06:50
到着時刻: 14:30
総所要時間: 7時間40分
遭遇したもの: 人も猿も大勢。
朝日に照らされた湯川流域。標高1,000m以下が紅葉の見頃であった。

写真は最初の林道の分岐を右に進んだ所。三斗小屋温泉方面に続く林道ではなく、東京電力の取水施設で行き止まりとなる。ここでしばし時間をロス。

沼原から日の出平に到る途中のダケカンバ林。

一面のクマイザサと葉の落ちたダケカンバが対照的。

日の出平から見た茶臼岳と無限地獄

西側斜面は遠くから見ると穏かに見えるが、実際に歩いてみると少々怖い。地震が起きたら岩が崩れてきそうだ。

峰の茶屋から朝日岳に向かう途中にある鎖が付けられた岩場はさらに危険。ここを大勢の老若男女が平然とすれ違うのは異常だ。

隠居倉から見た熊見曽根(左)と朝日岳(右)

朝日岳の喧騒から逃れてくつろげる場所。眺望も素晴らしい。

那須は天気の良い日ならば故郷の猪苗代からも見える山。子供の頃から知っていたこの山は、車で何度か有料道路を走ったことはあっても登ったことは無かった。有料道路と茶臼岳のロープウェイで簡単に登れてしまうので達成感が得られそうになく、観光化されていてひっそりとした山歩きを楽しむ場所ではないというイメージが強すぎた。しかし、図書館で栃木県の地理や歴史の本に目を通すうちに徐々に那須についての認識が変わっていく。那須が修験の場として古い歴史があること、かつて那珂川の源流地帯を越えて会津に抜ける会津中街道があったこと、標高1,450mの大峠が戊辰戦争の舞台であったこと、車の入れない奥地に今もなお三斗小屋温泉が営まれていること等々が自分の興味をかきたてる。今年こそは行ってみようと思いつつも他の誘惑に負けて実現できないでいた。紅葉の季節は足早に通り過ぎて行く。一週間前に塩那道路から遠望した限りでは那須の紅葉は既に中腹に下がってきているようだったので、那須に行くならこの週末が紅葉狩りの最後のチャンスと思っていた。

前日(18日)は天気予報が大ハズレで、朝から良い天気。天気が悪いと決め込んで朝寝坊したので山行きは諦め19日(日曜日)に賭けた。人出が多いことを想定して朝早く出発したのだが、深山湖方面は意外に車が少ない。明け方の冷え込みは厳しくなかったが、風が強く深山湖が激しく波立っているのを見て少し不安になった。深山湖畔の道路上には猿の群れがいた。三斗小屋温泉方面に到る林道を進み、車止め(最初の橋)の手前に車を停めた。

6時50分 歩行開始。 林道は整備状態が良いが砕石がゴロゴロしていて歩くには不快である。最初の分岐の右側は東電の取水施設に到る道で、沼原に到る道では無い。ここで10数分時間ロス。分岐に戻って左側に進む。

7時20分 深山ダム分岐(標高約970m)到着。 寛政五年(西暦1,793年)と刻まれた道標が立っている。沼原に到る登山道がそんなに古い歴史があるとは意外だった。熊への注意を喚起する立て札があるが、チシマザサの筍が出る春ならともかく、この時期はまず心配ないだろう。道は一旦沢に下る。鉄製の橋が崩壊しているので、大水の時は危険な場所であるようだ。登山道は左岸沿いに下りもう一つの小さな沢を渡ったあとは急斜面を縫うように登っていく。これが麦飯坂なんだろうか?登りの中間地点には天宝十一年(西暦1,840年)に室井金佐衛門なる者が設置した馬頭観音がある。

急斜面を抜け緩斜面にさしかかったところでドヤドヤと軽装の大パーティが下ってきた。三本槍まで縦走するつもりだったのだが、朝は強風が吹いていたのであきらめたという。天気予報では朝は北の風・日中は南の風と予報していたので、自分が日の出平に登るころは風が収まっていることを期待した。

8時20分 沼原(標高約1,250m)到着。 沼原まで車で来られるということでさすがに人が多い。ここから三斗小屋方面に向かう。緩い登りが続く。残念ながらこの辺りでは紅葉はほぼ終わっていた。日の出平への分岐点までに約10名ほど追い抜いたが、分岐を過ぎてからは前後に人はなく、静かな山歩きとなった。尾根に上がると干上がった沼原湖が見えた。揚水式発電に用いられているとはいえ、コンクリートで固められた姿が痛々しい。

日の出平に到るまでクマイザサの藪が広がる。関東とはいえ、植生的には完全に東北である。美しいダケカンバの林を抜け、畏敬の池を過ぎると、白笹山と沼原を眺望できる場所に至る。先週歩いた男鹿山地も良く見える。遠く高原山や日光火山群も見えた。この後、ツアー客と思われる50名を下らない大パーティとすれ違い、しばし動けなかった。ようやく茶臼岳と噴煙が見えたが、なかなか近づかない。日の出平の呼称がぴったりくる広く平坦な地形である。

10時30分 日の出平分岐点(標高1,786m)到着。 南月山に行きたい気持ちもあったが、本日の行程を考えて自重。茶臼岳の周りには人がたくさんいて、遠くからみるとアリの行列の如く。牛ヶ首まで行ってみると茶臼岳が結構高く見える。風が強いし、先を急ぐので茶臼岳には登らず、右に無限地獄の噴気を、左にウバヶ平の美しい光景を眺めながら西側斜面の登山道を北に進む。

峰の茶屋付近は人でいっぱい。ここから熊見曽根に到る道を朝日岳に登った人がウジャウジャ戻ってくる。尾根の西壁につけられたコースの鎖場は下りが特に危険で、普通の感覚ならば人が近づく場所ではないのだが、皆さん感覚が麻痺しているらしく老若男女を問わず平気で渡っている。最も混雑する時間帯にここを通る羽目になってしまったが、熊見曽根に到るにはこれ一本しか無いからしかたがない。感じの悪い対向者もいるが、自分がここを通るのはこれが最初で最後だろうから我慢。

11時30分 朝日岳山頂(標高1,896m)到着。 朝日岳も無視して通り過ぎようと思ったが、普通のオバチャンでも登っていることだし、せっかくなので頂上まで行って見た。人が大勢たかっていて、ゆっくりする気分ではないので眺望を確認してすぐに下った。熊見曽根の一歩手前のピークには誰もおらず、風も当たらず気持ち良かったので、ここで昼食にした。10分ほど休憩した後、熊見曽根をかわして隣の1,900mピークに到り、戻るような形で熊見曽根分岐点を経由して三斗小屋温泉方向に下った。

午前中に下りに入ったので理想的なペースである。隠居倉経由で三斗小屋温泉に下る人は少なく、茶臼岳から三本槍までの喧騒が嘘のようだ。ちょうど風裏で日当たり良好だったので隠居倉に到る尾根がとても気持ちが良かった。

12時17分 隠居倉(標高1,819m)到着。 ちょっと離れて突き出たピークなので360°を見渡せる場所。この日歩いたコースで最も自分の好みに合った場所である。磐梯山と同じ高さにいるのだなと思いながら10分ほど休憩。ここからの下りは急でゴツゴツした道だが、危険というほどではない。噴気らしいものが見え出した。火山活動の中心である茶臼岳から離れた場所だが、温泉があるのだから噴気が出ていても不思議ではない。登山道は噴気のすぐ横を通る。なかなか勢いが強い。これが三斗小屋温泉の源泉なのだろうか。泡が立つ湯溜まりに卵の殻が落ちていた。だれかわざわざ生卵を持ち込んで温泉卵にして食ったらしい。

13時10分 三斗小屋温泉(標高約1,470m)到着。 三斗小屋温泉神社の階段を下り、鳥居を抜けると三斗小屋温泉の裏に出た。まるで民家の庭を突っ切るようにして、干したシーツを縫うように抜ける。登山者用に水場があるのがありがたかった。

三斗小屋温泉からは湯ノ沢沿いの細い道を延々と下る。疲れた脚にはこれがけっこう長く感じられる。三斗小屋温泉まで下れば山を下りたような気分になるが、出発点までまだ500m強も下るのである。湯川に架かる鉄製の橋を渡ったところが林道の終点で、ここからはただの林道歩きである。三斗小屋宿跡には何台か車が停まっていた。温泉関係者でもないのに車止めを越えて林道に進入して来られるのが不思議。さらに下ると昔の三斗小屋宿の墓地がある。今もお参りする人がいるのであろうか。

14時10分 深山ダム分岐(標高約970m)到着。 周回達成。あとひと踏ん張り。

14時30分 歩行終了。 

紅葉が美しいのは高山帯のドウダンツツジやナナカマド等の低潅木と沢沿いのカエデ類である。高山帯の紅葉の時期は逃してしまったが、車止め付近の沢沿いでは午後の陽光を浴びた紅葉が美しかった。初めての那須巡りは天気に恵まれ、体調も良く、眺望と紅葉も楽しめて、秋を満喫することができた。