| 2001年のアユ釣りは初挑戦で惨憺たる成績ではあったが、幾度かの鮮やかな興奮の余韻を残し、10月上旬にシーズンを終えた。その後、コイやニゴイ釣りにうつつをぬかしている間に紅葉の季節も過ぎようとしていた。夏にジョギングのしすぎで膝を痛めてしまい、その後は激しい運動を一切避けてきたため、山に行くのが億劫だったのである。再び膝を痛めればまた数ヶ月を棒に振ることになるので、まずは距離が短くて歩きやすいところから始めることにした。最初に行ったのは、以前から気になっていた尚仁沢東側尾根伝いの旧登山道探索である。 過去何度か台覚寺の近くを車で走ってみたが、現在は使われていないらしく、入り口らしきものは見当たらなかった。地図上では終点は青空コース上のどこかにあるはずだが、過去2回見つけることができず大回りする羽目になった。この登山ルートを突き止めるのが5月の尚仁沢周回時に残された課題である。地図上では、この登山道は尚仁沢林道と交わっているはずなので、まず、この交差点を見つけることにした。尚仁沢林道は谷の斜面を2回折れ曲がって東側尾根に出る。そこからしばらく続く緩やかな坂を下りきった辺りが交差点である。2001年11月初旬に訪れたときには旧登山道入り口に「釈迦ヶ岳」と書かれた旧い小さな立て札があった。尚仁沢林道で分断された両側を見ると、登山道というよりは昔の植林時につけた道の名残みたいなもので、人が通った形跡はない。案の定この道に沿って進むと途中で道が完全に消えてしまう。目印も何もない。カラマツや檜の植林地帯を緩やかな勾配に沿って尚仁沢に平行する形で進むと、落葉樹に覆われた急勾配にぶつかり、しばし急登する。斜面には道跡のようなものが右斜め上に向かってついているが、これを無視して尾根筋を意識しながら登ると、じきに鳥獣保護区の標識が現れる。ここからは再び勾配が緩やかになる。部分的にではあるが登山道らしきものも残っている。しかし、なだらかな尾根で下生えは低いミヤコザサのみなので、どこでも歩ける。しばらくすると広いなだらかなピークに至る。このピークを一旦下った先に檜の林があり、そこから再び急登りとなる。このときは膝にまだ不安があったので、檜林から上に登ることができそうなことを確認するにとどめて戻った。カエデの紅葉がとても鮮やかで、この秋に見逃した分を一気に取り戻した気分であった。
次に訪れたのは11月24日である。前回は運動不足のせいで少し登っただけで筋肉痛になったが、膝関節は完治したことが確認できた。今回は登山道の終点が青空コースの何処になるのか確かめるつもりであった。前回の調査で旧登山道がどの辺りにあるかを特定したので、今回はわざわざ入り口から辿ることはせず、尚仁沢林道の最も標高の高いところから近道した。この時期は既に狩猟が解禁されているのだが、幸い近くに狩猟者はいない。カエデの紅葉も既に終わり、樹種はわからないが、赤紫色の少し地味な紅葉が残っているのみで、蕭蕭とした雰囲気である。
標高1,000m付近の小ピークにある、赤いペンキが着けられた水準点らしきものを良く見ると、文字が彫ってあった。"42陸軍用地"と読める。山奥で陸軍が活動した痕跡を見つけるとは思わなかった。どの時代のものか不明だが、高原山は明治時代から陸軍が軍馬の育成を行った記録があるので、かなり古いものかもしれない。小ピークから檜林に進むと、檜林の前面に土塁が築かれているのがわかった。春に鴫内山で見た土塁と似ている。こんなところに江戸時代以前に砦があったとは考えられないので、これも陸軍に関係するものと思われた。檜林の内部へも踏み跡らしきものが続いているが、周囲の地形が確認できなくなるのが嫌なので、檜林の左縁の踏み跡に沿って登った。しばらく登ると踏み跡が尚仁沢の斜面の方向に向かっているので、踏み跡を無視して尾根筋を意識しながら登っていった。
尾根を登るにつれて稜線が明確になってくる。尾根の左側の斜面はずっと同じ調子の勾配だが、標高1,150m付近では尾根の右側の斜面はかなりの急勾配になる。小ピークから始まる檜林は標高差200mにわたって尾根の稜線を占有する形で続いている。林の最下部では林の縁が明瞭で、外から見ると人口林に見える。営林署の保安林の標識もある。しかし、木の配列には規則性があるともないとも言い切れない。手入れの跡が無く、広葉樹も若干混じる。最上部ではどう見ても自然に生えたとしか思えない独立した木がある。檜の自然の植生を知らないので、この林が人工林なのか自然林なのかは判断できなかった。そもそも檜と思い込んでいたのはアスナロだった可能性もある。不勉強で、つい最近まで両者の見分け方を知らなかった。あるホームページで日留賀岳登山道の途上にアスナロの自然林があることが書かれていたので、この林もそうなのかもしれない。
檜の生えている場所を抜けると勾配が緩やかになり、終点が近いことが判る。相変わらず道ははっきりせず、道の跡なのか自然の窪みなのか区別できない。潅木の茂みと腰くらいの丈の笹に覆われた平坦地をどこまで進めばよいのだろうと思っていたら、いきなり青空コースに飛び出した。ミツモチ山まで0.4km、大間々台まで2.5kmと書かれた、見覚えのある標識のある場所であった。道路からは今しがた歩いてきたところが旧登山道であるようには全然見えない。過去2回、見つけることができなかったのは無理からぬところだ。
この日は青空コースをさらに1kmほど大間々方面に進み、釈迦ヶ岳や尚仁沢を望める場所で着替えと食事を済ませて同じコースを戻った。尚仁沢林道を歩いて精進橋近くのゲート前に停めた車に戻るとき、鳥獣保護区のはずなのに、林の中に猟友会の人達の姿が見えた。危うし危うし!
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