| 暖かくなって随分体の調子も良くなった。走り込みも何度か行って、体力的にも山登りに耐えられる状態になっていた。この年はアユ釣りに挑戦する予定だったので、アユ釣り解禁の6月1日からシーズンが終わる10月までは山に行く予定がない。2年以上も釈迦ヶ岳に行っていないし、山に行くなら今しかないと考え、以前からやってみたいと思っていた尚仁沢一周に挑戦した。 林道黒沢-尚仁沢線、標高800m付近にある尚仁沢登山道入り口に着いたのは朝の7:40。いつもの如く、停まっている車は無く、先行者はいない。まだ涼しい時間帯なので順調に進んだ。守子分岐に8:20、前山には9:20に着いた。この時期に登ったことがなかったので、守子分岐の原生林の新緑や、前山中腹のトウゴクミツバツツジがとても鮮やかに感じられる。釈迦ヶ岳林道から来る登山道を多人数のパーティーが登っているらしく、前山頂上に近づいたとき賑やかな人声が聞こえてきた。前山を過ぎて気持ちの良い平坦部で中年女性中心のパーティーを追い抜き、それからは先行者がいなくなる。あまり飛ばしすぎて釈迦ヶ岳の登りで少々バテたが、暑くなる前に、10:20に釈迦ヶ岳山頂に着いた。今回も残念ながら、2年前に見た、残雪の下に埋もれていたテントを再発見できなかった。
釈迦ヶ岳山頂には既にスキー場方面から来たと思われる何名かの登山客がいた。早春や晩秋の景色に較べると空気の透明度が欠けていて、山頂からの景色に今ひとつ感動しなかったので、休憩もせず先に進んだ。釈迦ヶ岳の裏側に下るのはこれが初めてであった。塩原のスキー場に至る道と剣ヶ峰に向かう分岐点で携帯電話(ドコモ)を掛けてみたが、電波強度は十分で良く聞こえた。高原山の尾根筋のコースでは圏外になることはほとんどないであろう。日光では山中でなくても圏外の場所が多いと聞く。群馬県が登山客の安全を確保するために基地局を設置しようとしたが、携帯電話が通じると着メロや話し声で観光地の静寂が妨げられるからという理由で栃木県は反対しているらしい。既に大勢のハイカーが入り込んで都会並みの喧騒をもたらしているのだから、人の安全を考えないこの判断は愚かだ。
剣ヶ峰に向かうコースを進む途中で、次から次へと大間々方面から登ってきる登山客とすれ違った。アプローチが長いのだが、このコースを利用する登山客が意外に多い。尚仁沢奥に屏風のように見える釈迦ヶ岳と剣ヶ峰の間の連絡尾根は、想像していたより眺めが良くなくつまらない。平坦なのかと思いきや、小さなアップダウンがあって疲れる。左手にスッカン沢の急斜面を眺めながら坂道を登っていたら脚が攣った。気は若いつもりだが40過ぎると体がついていかない。少しオーバーペースだったようなので、しばし休憩をとった。この辺りでヤシオツツジを何本か見かけた以外には特筆すべきものは無い。剣ヶ峰には正午に到着した。上空にはだんだん雲が多くなってきた。釣りでなくとも朝早いうちに行動するのが正解である。剣ヶ峰からは見晴らしコースを辿り、途中から青空コースに近道した。この近道は近年開かれたものだが、道跡が明瞭でないのでガスがかかっているときは避けたほうが無難であろう。
青空コース沿いにトウゴクミツバツツジが咲いていた。このコースを歩く人は意外に少なく、すれ違ったのは2、3人程度であった。できれば尚仁沢の東尾根を下る登山道を通りたかったのだが、どこにあるのか判らず、結局ミツモチ山まで行ってしまった。ミツモチ山には大勢のハイキング客がいた。ここからはミツモチ山の林道に沿って下り、途中から右に逸れて県民の森に抜ける登山道を下った。ただし、道なりに歩くと遠回りになってしまうので、勾配が比較的緩やかになった場所から道無きところを真っ直ぐ下った。ミヤコザサの繁る原生林の斜面は歩きやすい。これが高原山の魅力の一つでもある。宮川源流域の沢を伝って尚仁沢林道に抜けた。このとき、沢のどこからか不気味な鳴声が聞こえてくるのだが姿が見えない。よく耳をすますと水が滲み出す地中から聞こえてくるようだ。斜面の土砂を掻き分けると、トノサマガエルくらいの大きさの土色をしたカエルが出てきた。このカエルは地中で繁殖するのだろうか?精進橋付近の湧水の流れ下る場所でサルが吠えるような大きな鳴声が聞こえるが、正体はたぶんこれと同じ種類のカエルであろう。この後、尚仁沢林道を約3km歩いて14:30に出発点に戻り、目標を達成した。
少々歩く距離は長いが、魅力的なコースであると思う。尚仁沢東尾根の登山道を使えばもっと楽に歩けるはずである。
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