釈迦ヶ岳、中岳、西平岳周回 (1999年11月)
年月日: 1999.11.10
目的: 釈迦ヶ岳、中岳、西平岳縦走
出発点: 釈迦ヶ岳林道終点、標高1,060m付近
到達最高地点: 釈迦ヶ岳山頂(標高1,794.9m)
到達最遠地点:  
天気: 晴れ
出発時刻: 9:00
到着時刻: 1:30
総所要時間: 4時間30分
遭遇した動物: シカ3頭
残り紅葉の様子から見て、山歩きのシーズンも終わりに近づいていた。シーズンの最後に釈迦ヶ岳、中岳、西平岳を縦走しようと考え、休暇を取得して出かけた。この朝は冷え込みが厳しく、釈迦ヶ岳山頂はうっすらと雪を被っている様子であったが、快晴・無風で絶好の登山日和であった。藤原宇都宮線を進み釈迦ヶ岳開拓から尚仁沢林道に入り、黒沢を渡り林道終点まで車で進んだ。途中、西平岳の尾根取り付き附近に車が2台停まっていたので、西平岳から釈迦ヶ岳へ縦走しようとする人がいるようだった。私とは反対回りなのでどこかで行き会うだろうなと考えながら前山目指して登り始めた。

とても寒い朝だったので、前山まで一汗かいてしばし休憩しているとすぐに体が冷えてしまう。ポットのお茶が大変おいしく感じた。前山を下って釈迦ヶ岳に向かう途中でシカ2頭がすぐそばから走り去った。先行者がいない証拠である。無人の野にたった一人というのは実に爽快な気分だ。春先に登った時に釈迦ヶ岳直下で残雪から黄色いテントがはみ出ているのを発見したが、雪下から引っ張り出せなかった。多分あれは登山道からはずれた場所だったのだろう、今回は発見できなかった。前日降った雪はたいした量ではなく、難なく釈迦ヶ岳頂上に達した。

山頂には既に中高年の夫婦が一組、釈迦如来像のところで休憩中であった。踏み跡から判断するに塩原方面から来たようであったが、愛想が悪そうだったので近づかなかった。なんとなく落ち着かないので休憩もせずすぐに下山して中岳に向かうことにした。直下で年配の夫婦が登ってきたので気持ちよく挨拶して通り過ぎた。西平岳、中岳を縦走してきたのであろう。元気だ。自分もあの年頃になったときそれだけの元気が残っているものだろうかと考えさせられた。中岳に至る稜線上で、ラジオを鳴らしながら歩いてくる男性とすれ違った。結局、この日南側から登山したのは私以外にはこの3名だけであった。

中岳は岩がごつごつしていて雪が積もって凍り付いていた。ところどころ置いてあるロープがなければこの季節は危険だ。コメツガ主体の針葉樹に覆われて見晴らしは良くない。金属製の小さな神様が祀られていた。中岳は表側も裏側も崖になっていて、高原山の中で最も険しい様相をしている。

中岳を過ぎると急な登りはなくなり、右側に旧爆裂火口壁を眺めながら楽に西平岳に至る。対面の縁に登山者らしき姿が見えた。塩原側から釈迦ヶ岳を目指す人たちであろう。西平岳は何処が山頂かわからないようなダラっとした形状で、一面潅木に覆われている。鬼怒川方面の景色が良く見えない。昼食後、中岳と釈迦ヶ岳の写真を撮ってから一気に下った。西平岳の尾根の下りは一本調子なので結構きつく感じられた。特筆すべきものは何もない。

釈迦ヶ岳林道に出て黒沢に架かる橋を過ぎたところで、再びラジオを鳴らしながら歩く男性とすれ違った。お互い同じ様なペースで歩いたことになる。彼と別れてしばらく歩くと、右手の黒沢斜面の植林地内で檜が一本激しく揺れているのが見えた。この辺りの檜は樹齢20年程度であろうか。最初は林業関係者かと思ったのだが、根元から木を揺らすというのは人間業ではない。クマか?いままで長いこと独りで山歩きをしてきたが、幸か不幸か一度もクマに遭遇したことがない。こちらがじっとしていると木の揺れは収まる。足音をたてると狂ったように激しく揺れる。気味が悪いのでその場を離れて車を停めた終点に向かった。車に乗って釈迦ヶ岳林道を戻る途中、再び檜が揺れているのを見た。車を停めておそるおそる斜面を下ってみると、正体は立派な角を持った大きな雄ジカで、ワイヤーに角がからまってもがいているのであった。人が近づいてくるのを見て激しくもがいていたが、優しく声をかけると安心したのかそれとも観念したのか静かになり、近づいてペタペタ触っても暴れなかった。可愛いいものである。

シカがワイヤーを引っ張っているので、きつく角にからまっていて、外れそうにはなかった。無理に角から外せば角で突かれる危険があるので、木に結わえた方を外すしかなさそうであった。このワイヤーを張った目的は何なのか?この辺りの植林した檜は皆成長して食害に会う事はないのでシカ除けは必要ないし、樹木2本だけワイヤーを張ってもシカ除けにはならない。そもそも金属ワイヤーを檜に直接巻きつける行為は樹木を傷つけるので許されることではない。シカが暴れたので檜の樹皮は全部剥がれてしまっていた。この木はじきに枯れてしまうだろう。狩猟解禁は11月15日からだが、シカを捕らえるために行っているとしたら他にも同じ様な罠がしかけられているであろう。これはかなり悪質な行為だ。

一旦カメラをとりに車に戻り、シカの姿を写真に収めた後に、ワイヤーをほどいた。ほどきながら少しずつワイヤーを緩めるとズリズリッとシカが後ずさりしていく。最後にパッとワイヤーを離した瞬間、シカは後ろを向いて、長いワイヤーをつけたまま谷の斜面を猛スピードで走り下った。運良く春まで生き延びられたら角が生え変わって元通り自由に行動できるだろう。幸運を祈った。このときの写真は高原山で最も思い出深い一枚となった。