| 年初に尚仁沢登山道を見つけてから、ずっと釈迦ヶ岳に登ることを考えていた。3月に一度挑戦したが、雪が激しく降ってきたため途中で引き返した。今日は無風・快晴で暖かく絶好の登山日和だ。 4月上旬は木々の芽がまだ膨らんでいない。新緑の季節はまだまだ先のことで、林の中の見通しも良く、晩秋と同じ感覚で登れる。守子神社の辺りまでは積雪もなかった。守子神社を過ぎると登山道がどこにあるのかわからない区間があるが、誰かが木々の枝に赤い目印をつけてくれてあるので、これを頼りにすすんだ。次第に勾配が急になり、単調な登りで疲れを感じる。途中で釈迦ヶ岳林道からの登山道が左手から合流するのだが、このときはまだ案内板が設置されておらず気付かなかった。さらに勾配が急になり木につかまらないと登れなくなる。笹の上に積雪していて踏ん張りが効かない。先が思いやられたが、ここを抜けると気持ちの良い前山の山頂に着いた。
前山から釈迦ヶ岳が良く見え、登山ルートも確認できた。かなり遠いが、時間はたっぷりある。体調も良い。心配なのは積雪の状態だけだった。頂上は気温が低いのであろう。樹氷が着いているようであった。イラモミ?の林がある尾根は深く積雪していて登山道は確認できない。だれも通った人はいない。クマの足跡だけがあった。雪は新雪ではないので表面附近が比較的固く、深く踏み抜けることは少ない。雪国で育った子供の頃を思い出した。山登り専用の靴を履いているわけではないが、なんとか進むことができた。日当たりが良い場所は良いが、勾配が急な場所は前山と同様、雪が邪魔で登りにくい。釈迦ヶ岳直下は特に積雪が深く、登山道が判らないので、歩きやすそうなところを適当に登っていった。
登山道を外れて歩いているとき、雪面に黄色いテントの布がはみ出ているのを発見した。登山者がテントを設営して置きっぱなしで帰るということがあるのだろうか?まさか誰か冬山登山でビバーク中に遭難したのかと思い、テントを引っ張ってみたが雪が固くて抜けない。そのうち布が破れた。破れた様子を見る限りではつい最近のものではないようだった。その後、同じ登山道を通る機会が2回あったが、登山道から外れた場所にあるせいなのか、見つけることはできていない。
頂上は日当たりが良く、積雪も少ない。空気が澄み渡っていて、360°の絶景である。木々は樹氷が着いて白い花が咲いたようだ。人の足跡は全くない。今年最初の登山客というわけではないのだろうが、実に気分が良い。南側に真新しい釈迦像が置かれている。少し下ったところにも小さな神様があり、何を祀ったものかわからないが、古い1円玉や5円玉がたくさん置いてある。
帰りは前山まで同じ道を辿った。前山で登山道が二手に分かれている。右下に土上平放牧場が見えるので、おそらく黒沢沿いのどこかに至るのであろうと予測して右側の登山道を選んだ。途中、シカの群れが走り去るのを見た。果たして、釈迦ヶ岳林道の終点に着いた。ここからいかにして車に戻るかが問題である。黒沢はかなり深い谷なので、いきなり谷を下るのは危険だ。釈迦ヶ岳林道を歩いて途中から土上平放牧場を抜けるという手もあるが遠回りだ。このときはまだ、尚仁沢林道に連絡する道があることを知らなかったのである。釈迦ヶ岳林道でフキノトウを採りながら帰り道を思案していると、山仕事の格好をした人が終点方向から現れ、挨拶をするでもなく黒沢方向に歩き去った。この日、山で見た唯一の人物である。
結局、黒沢の左岸(東側)の尾根の道なきところを下ることにした。最初は檜の植林地帯だが、すぐに人手の入っていない原生林となる。勾配が緩く歩きやすい。シカにとっては絶好の越冬地なのであろう。こっちにダダッ、あっちにダダッという感じで何頭もシカを見かけた。ノウサギも見た。この尾根は最後は黒沢から東側に沢が分かれる場所で消滅する。あとは黒沢の底を下るしかない。黒沢は涸れ沢で、底の平坦地も広く、歩きやすい。無事、林道・黒沢線の荻の芽橋に着き、1kmほど林道を登って車に辿り着いた。
尚仁沢登山道の確認、釈迦ヶ岳登頂に加え、釈迦ヶ岳林道登山口確認、黒沢の探索、シカとの出会い等、思いがけない収穫が得られた。
|