高原山の 川 / 沢 / 谷 / 滝 / 沼 / ダム

高原山は那珂川と鬼怒川の双方の水源となっているが、那珂川水系に流れ込む水量のほうが圧倒的に多い。高原山域の約50%が箒川、40%が荒川の水源となっている。特に箒川は男鹿山地南側から発する流れも加わって水量が多く、高原山の北面と東面をグルっと回るように流れていて、観光名所も多く、釣り場としても有名で、名実共に高原山を代表する川である。一方、荒川の水源地域は小さい沢がほとんどで知名度も低いが、それ故に静けさが保たれている。危険な場所は少なく、また、南面にあるため明るい雰囲気が特徴的である。

 

尚仁沢
釈迦ヶ岳と剣ヶ峰に囲まれた広い斜面に端を発して東荒川に合流する大きな沢であり、塩谷町と矢板市の境界になっている。藤原宇都宮線(県道63号)より上流部に有名な尚仁沢湧水がある。この辺りは伏流水の湧出が多く水量豊富であるが、ほとんどの水は途中から東荒川ダムに導水され、残りがダム直下で東荒川に合流する。湧水より上流側約2.5kmは涸れ沢である。精進橋より1kmほど上流に最後の砂防堰堤があり、その上流側では一年中水が流れている。

最上流の砂防堰堤までは工事用の車道で行ける。ここからすぐには入渓せず、西側の山肌を走る踏み跡を通って数百m上流地点から入渓するのが良い。入渓地点から数百m遡行すると、右側に大きな涸れ沢が現れる。さらに1km以上遡行すると釈迦ヶ岳から流れてくる沢と剣ヶ峰から流れてくる沢の合流点に至る。両方とも水量は同程度である。私自身が行ったことがあるのはここまでである。平水ならばウェーダー無しで比較的楽に遡行可能である。地図によると、この辺りは権現沢と呼ばれているらしい。ところどころ道がついているので、ここも山岳信仰の対象地であったと考えられる。

上流部ではイワナが自然繁殖している(天然ものかそれとも移植放流に起源を持つものか不明。腹が黄色で斑点は白、パーマークの無いきれいな魚体。)。分岐点より上流に釣り人が入っていくのを見たことがあるが、その水量からみて釣りになるのは一応分岐点までと考えられる。決して数は多くないので、持ち帰ることは厳に慎みたい。

黒沢
尚仁沢の西隣の沢。上流はほぼ涸れ沢で、下流に行くにしたがって少しずつ水量が増す。但し、渓流魚が生息できるほどではない。最下流で隣の尚仁沢からの導水路と合流して東荒川ダムに流れ込む。釈迦ヶ岳林道よりはるか上方では多少水が流れているようで、そこからホースで釈迦ヶ岳林道を跨いで土上平放牧場に導水している。

黒沢林道の橋の上手にある砂防堰堤から入渓し、土上平放牧場の上にある釈迦ヶ岳林道の橋まで標高差250mを比較的楽に遡行できる。この区間では景観として特に見るべきものはないが、この辺りは野生の鹿が多数生息しており、高い確率でその姿を見ることができる。また、春は沢底の平坦地に多数のカタクリの花が咲く。土壌が湿っているためか尾根のカタクリに較べると花弁が大きく美しい。4月中旬が見ごろである。数は少ないがヤシオツツジも見られる。

東荒川
西平岳斜面から土上平放牧場南西方面に突き出た東立室・西立室に水源を持つ沢が合流して東荒川ダムバックウォーターに流れ込む。これに黒沢と尚仁沢が合流して東荒川を形成する。東荒川ダムを出た流れは1kmほどの狭い渓谷を抜けると鳥羽新田で渓流相となる。ここから西荒川との合流点までの5kmは若干水量が物足りないが好釣場である。堰堤が多いので渓流魚の再生産はあまりないと思われるが、鬼怒川漁協による放流が行われているので、渓流釣り場として人気がある。入渓点が判りにくく、駐車スペースもあまりないので注意されたし。
東荒川ダム
東荒川のほぼ100%の水を潅水する多目的ダムであり、日常的な流量調整に大いに役立っている。高原山南側は典型的な太平洋側の気候であり、降水量があまり多くない。春に水田に一斉に引水する時期にダムによる流量調整がなければ、荒川は確実に干上がってしまうであろうし、魚類をはじめとする水生生物相は貧弱なものとなるであろう。一方、洪水防止には役立っていない。台風が直撃すれば流域の総降水量はダムの容量をはるかに凌駕し、最後は垂れ流し状態になり、土手が決壊するほどの水が流れる。

東荒川ダムの全景については下記URLをどうぞ。

http://www.pref.tochigi.jp/kasen/shoukai/damu.html

東荒川ダム湖畔の公園まで尚仁沢の湧水を導水しており、連日多くの水汲み客が訪れる。ダムは日中は開放されていて、対岸まで行くことができる。東荒川ダムは水道水供給源であるため、全面的に釣り禁止である。ダム事務所がカメラで監視しており、釣りをしているのを見つけると拡声器で注意する。

バックウォーターには大きなイワナが生息する。晩秋の産卵期にはイワナが遡上しているのを見ることができる。今後、ルアーやフライのみを対象とした釣り公園化の計画があるそうだが、ニジマス、ブラウントラウトを放流するのは生態系破壊につながるので止めていただきたい。釣り可能となればブラックバスの密放流が行われることも憂慮される。

西荒川
西平岳南斜面を水源とし、山並みを一つ隔てて東荒川の南を流れる美しい渓流である。釣り公園として有名な東古谷湖(西荒川ダム)の上流側は、渓相が美しいのでフライ愛好家に人気が高い。釣りに興味が無くとも、バックウォーターから5kmほど林道を行ったところにある大滝(写真)周辺は冬場が特に美しく、訪れてみる価値がある。これより奥は渓流釣り師が子連れの熊に襲われて大怪我をした実績があるので、川筋を歩くときは注意が必要である。

西荒川ダムの下流部も渓流相であるが、人家があるので入渓時はトラブルにならぬよう気をつけたい。東荒川同様、鬼怒川漁協で放流を行っているが、水量は東荒川の半分程度で釣り場としては魅力に乏しい。

西荒川ダム
釣り公園として東古谷湖の名の方が通りが良い。狭い谷につくられたダムなので日光が山に遮られ冬季は氷で覆われる。流量が少ないので、水の滞留期間が長く、特に夏は水質があまり良くない。

休日はニジマス、コイ、ワカサギなどを狙う釣り客で賑わう。ここは鬼怒川漁協の特設釣り場であり、川とは別の入漁券が必要なので注意されたし。

荒川
塩谷町下寺島で東荒川と西荒川が合流し、中流域の様相を呈してくる。落合の合流地点及び下流の玉生に水辺公園があり、子供を水場で遊ばせるのに良い。合流地点から塩谷町の荒川橋に至る7kmほどの区間は堰堤が多く、一年中どこかで河川工事と称して川底をひっくり返しているので釣趣がわかない。

荒川橋から矢板市との境までの約3kmの区間は暴れ川で大水が出るたびに川相が変わる。この区間は堰堤が全くなく、護岸工事もほとんど行われていないので、雑魚の生息密度が高い。早瀬と浅トロが連続し、カワムツの天国になっている。浅トロでは小型、流れ込み横の深みには大型のカワムツがうじゃうじゃいて、餌にもフライにも季節を問わず良く反応する。オイカワはトロ瀬でフライに少数出る程度で生息数は少ない。ウグイは早瀬の脈釣りや食わせ釣りで数は出るが大型は少ない。この他、カジカとギバチが相当数いる。ヤマメもいないわけではない。釣れるのは少し銀毛の入ったものがほとんどだが、ヒレピンのきれいなヤマメである。サイズもいろいろで、この地域で再生産が行われているのは間違いない。過去最大は2000年8月に釣った29.5cm。ここに下水処理場の建設計画があり、地域住民の反対運動が起きている。川本来の姿が残された貴重な場所を残して欲しいものである。2002年の大水で岸が抉れたので、これを口実に護岸工事が進められてしまう可能性がある。

JR東北新幹線を過ぎたあたりからは那珂川漁協の管轄となる。

東トンボ沢、西トンボ沢
標高1,000m付近の八方ヶ原から流れ出る、木ノ芽沢の支流である。
木ノ芽沢
八方ヶ原を水源に持つ東トンボ沢と西トンボ沢が合流して木ノ芽沢となる。

木ノ芽沢林道の入り口にゲートがあり、林道に一般車両が入ることは認められていない。ゲートの右側に行く未舗装道路があり、これに沿って行くと木ノ芽沢の「水と緑の広場」に至る。水量が適度で、危険な場所がなく開けた場所なので小さな子供の水遊びには格好の広場である。

水と緑の広場の最上流に、この川の規模にしては不釣合いなほど大きな木ノ芽沢砂防堰堤(写真)がある。砂防目的のため貯水量はほとんどない。上流は本格的な山岳渓流で、水量もそこそこあり、イワナが棲息する。

堰堤の下流側は里川の様相を呈する。釣り糸を垂れたことはないが、類似の宮川と同様、カワムツが多数生息していると考えられる。開けた谷の水田地帯を流れて、金精川と合流して内川となる。

金精川
明治時代には根勢川と呼ばれていた。木ノ芽沢の西側にある小規模な沢であるが、標高800m付近でも麓とあまり変わらないくらいの水量があり、尾根の上まで水音が響いてくる。家族で出かけるなら、麓の道路沿いにある「金精川のマス池」でマス釣りがてら食事をするのも良いかも。

木ノ芽沢と合流して内川となる。山麓からの合流点までの渓相は木ノ芽沢と同じである。

天沼川 あまぬまがわ
八方ヶ原南端を水源とする。麓で東隣の沢(沢入沢)と合流する。両沢ともに水量は多くないが渓相は悪くない。釣りをしたことはないが、かなり上流まで魚が生息しているのを確認している。合流地点のすぐ下流に大きな砂防堰堤がある。そこから数百mの間は釣りになるが、さらに下流部では水が細り、藪川となるので釣り場としての魅力はない。矢板市立足地区で中川に合流する。
中川 ちゅうかわ
大間々台南斜面を水源とする。流域に3つの鉱泉(上流側から赤滝鉱泉、小滝鉱泉、寺山鉱泉)を持つのが特徴である。矢板市文化会館近くで内川に合流する。合流点附近では田んぼの中の用水路といった様子である。
宮川
ミツモチ山南斜面の幾つかの小さな沢が集まり宮川渓谷を形成する。県民の森では宮川渓谷に遊歩道が整備されており、群生するカタクリの観賞地として有名である。県民の森から下流では次第に流れが細くなり完全に伏流水となるので、水の無い川床を気持ちよく歩ける。寺山ダムの1.5kmほど上流地点で再び水が少しずつ流れ出す。さらに下ると滝の上部に至る。滝を降ることは不可能なので、一旦戻って右岸から高巻くしかない。滝から寺山ダムの間に2つの砂防堰堤があり、上流側の堰堤下から寺山ダムまでが天然イワナの生息地である。以前は木々が鬱蒼と繁って暗く、イワナにとっては格好の生息地であったのだが、残念なことに道路から渓谷が見えるようにするため2002年に木々が伐採されてしまった。

寺山ダム直下から釣堀までは渓流相だが、その後は典型的な里川の様相である。延々と田園地帯を流れ、矢板市木幡地区で内川と合流する。合流地点ではどちらも水量乏しく、河川工事でいつも水が濁っており、高原山中の清冽な流れに起源を持つ川とは想像できない。

矢板市長井地区では那珂川漁協がヤマメの稚魚放流を行っているが、水量が少ないので大型が住み着く環境ではない。この川を支配するのはカワムツである。昔、那珂川水系に湖産アユを放流した時に混じっていたカワムツの子孫であることは間違いないのだが、宮川に分布するに至った経緯が良く判らない。現在内川水系ではアユの放流を行っていないし、魚道の無い堰堤が多数あって荒川から遡上してくるのは不可能なので、堰堤が全くなかったころに侵入したと考えられる。

寺山ダム
矢板市から県民の森に向かう途中にある、珍しいロックフィル式の多目的ダムである。日中は対岸まで渡ることが可能である。ダムの全景については下記URLをどうぞ。

http://www.pref.tochigi.jp/kasen/shoukai/damu.html

バックウォーター附近の道沿いの山肌から細々と水が湧き出ていて、この水を汲みに来る人が多い。

バックウォーターに公園がある。ここ以外は急斜面であるため、ダム湖に近づくのは危険である。釣りは全面的に禁止されている。

内川
木ノ芽沢と金精川が合流して内川となり、矢板市役所附近で中川を、さらに約3km下流で宮川を併せて内川のほぼ全水量が集まる。冬場はほとんど水が流れていない。平坦な田園地帯を穏やかに流れる、天然の用水路といった雰囲気の川である。

川原が狭く、底石も小さく、しょっちゅう川底を掘り返しているので釣趣が湧かない。魚道のない堰堤が幾つかあるので魚類の再生産に向いていないし、アユの放流も行われていない。荒川との合流点までの長い流程が内水面漁業的には全くといって良いほど利用されていないのである。事実、釣り人を見かけることはほとんどない。降雨時に喜連川町の荒川と内川の合流点を見ていると、明らかに内川の方が濁りやすい。荒川全体のアユ釣りの活性化には内川流域の環境改善が必要であろう。

スッカン沢
鹿股川の支流で、高原山塊の中心を水源に持つ最大の渓谷である。さすがに火山の最奥部らしく、スッカン沢奥で酸性水が湧き出ているためスッカン沢には魚が住めない。遊歩道は無く、渓流魚も居ないので、誰も入り込まない。たいていの人は、下塩原・矢板線の橋のたもとから沢を眺めるのみである。
八方湖
八方ヶ原の東端にある天然の溜池で、野沢の水源である。県道下塩原矢板線から嶽山箒根神社に至る道沿いにある。ここで釣りができるという情報もあるが、仮に魚がいたとしても釣趣が湧く雰囲気の場所ではない。
野沢その1
高原山には2つの野沢がある。こちらは箒川支流の野沢である。いつもはほとんど水が流れていないが、大水が出た時には暴れ川となり大量の土石を流出する。水源は八方ヶ原の東端にある八方湖である。
唐滝沢
嶽山箒根神社直下を水源とし、宇都野地区を流れて箒川に合流する。西隣の木ノ芽沢とは1kmも離れていないが、両者の水が混じるのは遥か60km下流の烏山町、那珂川に荒川が合流する地点である。
箒川

塩原町の温泉地区を流れる箒川は渓谷美はもちろんのこと、夏のアユ釣り、春の渓流釣りでも有名である。塩原ダムより上流部は塩原漁協の管轄である(上の写真は回顧の吊橋から上流を見た様子)。ヤマメやニジマスを大量成魚放流するため、渓流釣り解禁日には首都圏から大量の釣り人が押しかけ川全体が釣堀と化す。一人で午前中に200匹釣る人もいるというから、釣趣も何もあったものではない。アユは100%稚魚放流によるものである。

塩原ダムから下流部は那珂川北部漁協管轄である(下の写真は宇都野橋上流の様子)。直下から1qほどは渓谷だが、平野部に出ると底石の大きな開けた渓流相となる。渓流魚は稚魚放流物と再生産した魚が主体なので、釣り客が大挙して押し寄せることはなく、比較的落ち着いて釣りができる。但し、春先は午後から決まったように川に沿って強風が吹くため、釣りが朝早い時間帯に限定されてしまうことが多い。

塩原ダム下から東北自動車道までの区間のアユ釣りは7月に入ってからの解禁である。この区間は魚道の無い堰堤によって下流からの天然遡上が妨げられるので人工産稚アユが放流される。箒川は水は澄んでいるのだが、塩原温泉と塩原ダムの影響で富栄養化しており、夏場は青ノロべったりで淵ではなんとなく風呂場の臭いが漂うこともある。底石が大きく不安定で歩きにくい。こう書くと良いところが全く無いようであるが、美しい風景の中で段々瀬の良型のアユとのスリリングなやりとりは実に魅力的である。高原山に夕日が沈むのを眺めながら一日の釣りを終えることができたときは満ち足りた気分になる。この流域はまたカジカ釣りでも人気がある。

東北自動車道より下流部は他の那珂川水系同様、6月1日解禁である。箒川は那珂川の最大の支流であり、東北自動車道附近までは天然ものが遡上してくる。ただし、百村川合流点より上流は農業用水の取水で水量が少なく、8月1日に投網が解禁されると釣りにならない。下流の福良の釣り専用区は那珂川本流よりも人気があり、9月一杯は大勢の釣り客で賑わう。